日経VIとは
日経VIとは、オプション投資家の需給を簡単に見ることがきるように指数化したものです。日経225先物を使ってATMの位置を決め、そこからそれぞれOTMになるコールとプットを使って15秒ごとに計算します。インザマネーオプションは使いません。
オプション投資家が今後の日経平均が大きく動くと予想すれば、オプションに対する買い需要が売り需要を上回り、オプション価格が全体的に上昇し、オプシそれを指数にした日経VIは上昇します。反対に、オプション投資家が今後の日経平均があまり動かないと予想すれば、オプションに対する売り需要が買い需要を上回り、個別のオプション価格が全体的に下落し、それを指数にした日経VIは下落します。
日経平均が上下すると、個別のオプション価格はそれにあわせてデルタ分が変動しますが、ATMも日経平均にあわせて変わってきます。つねにATMを基準にして指数化するため、日経平均の上下による影響は自動的に除去されます。
日経VIはインプライドボラティリティを指数化したものではありません。あくまでもオプション価格の集合体から計算するものですが、オプションは日経平均の変動性を予測して動くので、それをまとめて指数化した日経VIは日経平均の予想変動率を表すものとして扱われます。インプライドボラティリティと同じように正しく将来を予想するわけではなく、市場参加者のコンセンサスを反映したものだといえます。
日経VIの計算対象となるオプション
オプション価格は満期までの日数が短くなるほど、価格が低下していきます。同時にいろいろなリスク指標における感応度が高くなっていきます。個別のオプション価格から計算するインプライドボラティリティも変化率が大きくなり、不安定な動きをします。そこで、指数として継続的な観察ができるように満期までの日数が常に30日になるように調整しています。満期が常に30日になるオプションというのは実在しないので、既存のオプションを使って架空のオプションを合成しているということです。第1限月が最終売買日まで4日以上ある場合は、第1現限月と第2限月を使い、第1限月が最終売買日まで3日以下になると第2限月と第3限月を計算対象として、残存が30日になるように合成します。計算対象となる銘柄の交代を日経VIの限月交代といい、通常SQ週の月曜日におこります。
トレーダーの感じる違和感
計算対象が限月交代日をもって入れ替わるわけですから、この日を境にして厳密な連続性を失う点には注意が必要です。VI先物やボラティリティを売買するトレーダーは限月交代時の影響をあらかじめ推測しておく必要があります。それ以外の投資家がオプション市場の需給を概観するうえではそれほど大きな問題は生じません。限月交代時には、日経VIの動きが少し不安定になると覚えておけばよいでしょう。
限月交代以外の局面でも、オプショントレーダが日経VIの動きに違和感を感じる局面はあります。大きな理由は、オプションの中には割高に買われたり割安に放置されたりする一群があることです。通常ATMを中心にコール側は割安でプット側は割高です。コール側の割安度合いよりプット側の割高度合いの影響が大きいので、日経VIの値は残存30日の仮想ATMオプションのインプライドよりも通常2%程度高い数字になります。この割安度合いや割高度合いは投資家の需給によって常に変化します。オプション全体として割高度合いが高まる場合はほとんどがプット主導です。こうした構成要素の動きは日経VIを見ていただけではわかりません。自分の保有する銘柄にあまり変化がなくても日経VIが変動したり、日経VIの動きと逆行したりすることもあるのです。
日経VIに影響を与える4大要素
ATMオプションのインプライドボラティリティ
日経VIの大半を決める最も大きな要素です。日経VIを開発するまでは、ATMの上下のコールプットを使って日経IVという指数を計算していました。
計算対象となる限月の残存日数
残存30日の指数を作るために、2つの限月の残存日数を使って補間計算します。補間計算は2つの限月で残存30日を間に挟んで按分出計算するので直感的に分かりやすいのですが、補外計算の場合は少しややこしくなります。補外計算は計算対象となる2つの限月がともに残存日数が30日以上ある場合におこります。このときには、30日より残存が長い2つの限月を使って、手前となる残存30日の指数を作ります。期近と期先のインプライドボラティリティの差を手前側に反映させるので、補完されてできあがる数値は、元となった期近と期先の値を超える低い数値になったり高い数値になったりします。
コール側の割安度合い
通常、日経VIの押下げ要因として働きます。
プット側の割高度合い
通常、日経VIの押上げ要因として働きます。
VI先物のSQ
SQとSQの間が4週間ある月と5週間ある月が存在します。SQとSQの間が4週間の月はSQ週の月曜日に日経VIの計算対象が限月交代し、水曜日にVI先物が日経VIのSQで清算されます。限月交代後2日でSQです。
SQとSQの間が5週間の月はSQ週の月曜日に日経VIの計算対象が限月交代し、SQ翌週の水曜日にVI先物が日経VIのSQで清算されます。この場合は、限月交代後9日でSQです。
いずれの場合も、VI先物のSQ日には日経VIの計算対象となる期近のオプションの残存期間がちょうど30日になります。この日だけは残存30日オプションが実在するので、日経VIの構成要素はほぼ期近のオプションとなり期先のオプションは日経VIにはほとんど影響をあたえません。ほとんどというのは、日経VIは満期までの時間を秒で計算しているので、残存がぴったり30日というのは1秒間しかないのからです。この日を境に期近の日経VIに占める期近のウエートが減っていき、期先のウエートがだんだん増えていきます。
日経VIの成分をザックリと理解する方法
計算対象となる2つの限月(第1限月と第2限月、SQ4日前だけ第2限月と第3限月)のATMオプションのIVに注目します。オプションSQの30日前にVI先物がSQを迎えます。SQとSQの間隔が4週間となるときはSQ週の水曜日です。この、ふたつのATMオプションのIVを補間計算で残存30日に置き換えます。この仮想30日オプションのIVが日経VIの基本成分です。この基本成分から2%程度高い状態が通常の構造です。
この格差が3%を超えてるとプットが異常に割高な状態です。いわゆるスキューが立っている状態だといえます。この場合ATMボラも上昇中であるか、下値に対する過度な不安が高まっています。この格差が2%を割ってくると、下値不安が極端に薄れた状態になります。